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SF薀蓄館

ロボット

 ロボットの定義には、工業用ロボットなどとして現実にも使われる「人間の代わりに何らかの作業を行う機械」またはプログラムも含まれる「完全に自己制御できる電子的、電気的・器械的装置」と、SFなどで使われる「人型または人間に近い機能や動きを持つ機械」の主に2つの意味があります。
 人型のものはアンドロイド(厳密には男性型のみ。女性型はガイノイド)と呼ばれます。同様の意味で、ヒューマノイドという言葉もありますが、こちらは人間型の異星人を意味することもあります。
 ロボットは普通、無機物から作られていますが、アンドロイドには有機素材から作られた人造人間も含まれます。

 ロボットという言葉の初出は、チェコスロヴァキアの小説家カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲「ロッサム万能ロボット会社R.U.R.(エル・ウー・エル)」で、チェコ語やスロヴァキア語のRobota(労働)、Robotnik(労働者)から作られたということです。
 しかし伝説などには、ギリシャ神話に出てくる青銅の巨人タロスやピグマリオン、ユダヤの伝承のゴーレムなど、ロボットと呼んでも差し支えのないものも存在します。他にも人造人間や自動人形としてのロボットが出てくる伝説・伝承・創作物は多く存在します。

 一般的によく知られているロボットが出てくる古典作品は、自動人形コッペリアの登場するバレー「コッペリア」(1870年初演)ではないでしょうか。この原案となったのはドイツロマン派の作家・E.T.W.ホフマンの「砂鬼(砂男)」(1815年)で、こちらの自動人形の名前はオリンピアといいました。
 しかし最も知られているロボット登場作品は、人造人間を扱った「フランケンシュタイン」(1818年)に違いありません。

 20世紀になると前出の「R.U.R.」が発表され、ロボットSFは本格的な胎動を始めます。
 1930〜40年代になると、「キャプテン・フューチャー」シリーズを代表とする友好的な仲間としてのロボットが登場する一方、クリフォード・D・シマックの「前哨戦」のように反乱し、敵対する恐怖の対象としてのロボット作品も発表されるようになりました。
 1950年に発表されたアイザック・アシモフ「われはロボット」他、多数の傑作が発表された1950年代はロボットSF小説における黄金期と言ってもよいでしょう。

 日本においては、戦中に海野十三などの作家がロボットを扱った小説を書いてはいましたが、1952年から連載された手塚治虫の「鉄腕アトム」が日本ロボットSFの草分けと言えるでしょう。
 その後はさまざまなメディアの作品が発表されることになりますが、それについては割愛します。

 アシモフによって示された「ロボット工学三原則」とは、以下のとおりです。
第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第2条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第1条に反する場合は、この限りではない。
第3条 ロボットは、前掲第1条および第2条に反する惧れのないかぎり、自己をまもらなければならない。
(福島正実氏の訳による)
 しかし、これに則らない作品も数多く存在します。

 ロボットをSF作品で扱う上のポイントはいくつか考えられます。
(1)サイズ
 ドラえもん、アトムなどの等身大サイズ、ガンダムなどの巨大サイズ、ナノロボットなどの極小サイズ。
(2)システム
 自分で判断し動く「自律型」、「遠隔操作型」、巨大ロボットに人間が操縦者として乗り込む「搭乗型」。
(3)テーマ
 ロボットをメインとした作品のテーマは大まかに分けると、友好的なロボット、敵対するロボット、悩めるロボットの3つがあるといえるでしょう。
 1番目は、命令のとおりに作業をしたり、人間を守り、楽しませ、慰めるなど、人間のよき友人・協力者としてのロボット。
 2番目は、創造主である人間を殺したり、反乱を起こしたりする、恐怖の対象としてのロボット。
 最後は、人に近い存在であるがゆえに、人になることを願ったり、人との違いに悩むロボットです。

 小説、映画、アニメ、マンガなどさまざまなメディアによって、ロボットは描かれ続けてきました。それゆえに、テーマとしてはある程度ネタの出つくしたジャンルと言えなくもありません。
 しかし、幼いころから慣れ親しんできた私たちにとって、ロボットが魅力的な素材であることに変わりはないと言えるでしょう。

[参考文献]
「SFハンドブック」早川書房編集部編/ハヤカワ文庫
「SFロボット学入門」石原藤夫著/ハヤカワ文庫
   ◇◇◇
以上、黒木露火さんより寄稿いただきました。ありがとうございました!

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