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SF薀蓄館

サイバーパンク

 サイバーパンクとは、生物の持つ機能や意識を機械的、生物的に拡張させ、それらのギミックが社会に普及した世界を描くジャンル。
 サイバーパンクの語源となったサイバネティックス(cybernetics)とは、生物学、機械工学、情報工学などを統一的に扱う学問であるが、このサイバネティックスの考えによって生み出されたのがサイボーグである。身体機能を機械で補うことにより、人体の欠損を補うあるいは強化を図るというものである。あるいは脳神経機能の工学的拡張やネットワークへのアクセス技術もサイバネティックスに含まれる。こうした人体と機械の融合、脳内とサイバー・スペースと呼ばれるネット空間との接続技術が「過剰に推し進められた(パンク)」社会構造、経済構造が描写されている。また、サイバーパンクの代表作の幾つかでは退廃的で暴力的な近未来社会を舞台としたため、単にそのスタイルのみを真似た作品が「サイバーパンク」を名乗ることもある。
 このサイバーパンクというジャンルは1980年代のアメリカで興ったが、当時はパーソナルコンピュータやインターネットの前身となる広域ネットワークの研究や普及が始まっていた時代であり、先人たちはそれらが過剰に普及した未来を構想した。しかし現在、パーソナルコンピュータや携帯電話が普及し、インターネットが当たり前になりサイバーパンクはあえてジャンルかするまでもないものとなった。今後、コンピュータはどんどん小型化し、ネットワークにどこでもアクセスできる「ユビキタス社会」が到来すると予測されている。そのための機器を持ち歩くのではなく身につけるという「インフォシェア」の概念が打ち出され、我々の社会はますますサイバーパンクに近づいているといえる。
 代表的な作品に、ウィリアムギブソンの『ニューロマンサー』や士郎正宗『攻殻機動隊』などがある。いずれも人体を機械で置き換えたサイボーグやネット空間に意識を投入するサイバー・スペースなどの概念が取り入れられている。
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※以上、俊衛門さんより寄稿いただきました。以下、補足です。

 舞台は近未来(25〜75年ほど先)が通常。想像しやすい未来、とのことですが、実際そのぐらいの年数でサイバーパンクが常態的にありえているかどうかという点になりますと、疑問が残ります。胡散臭さを払拭するような尤もらしい説明を文中に入れればベスト。
 電脳世界、という言い方はちょっと難しいかもしれません。ネットと現実社会の境界線をより曖昧にしたような世界、といいますか、融合させたような世界観であるものが多いようです。「マトリックス」なんかでも、虚構と現実が曖昧で、一度観ただけではちょっと理解しがたいような設定(今まで生きてきた現実=虚構で、サイバー空間だと思っていた場所が現実)ですよね。

 インターネット用語を駆使したり、近未来的な科学用語を多用する場合も多いでしょう。
 コンピュータがどの程度進化しているのか。ネットワーク、ハードの面での進化、サイバースペースとのアクセス方法等々、電子的な知識も必要になってきます。
 近未来、という舞台設定から、遺伝子工学に触れる場合も出てきます。クローン、ES細胞、iPS細胞、肉体改造云々、生物学的知識や医療知識が必要な場合もあります。
 不安定な社会情勢であるという設定を選んだ場合、武器や兵器の知識が必要になってくることも。自衛隊、アメリカやその他の国の軍隊に関する知識、銃機器や特殊部隊などに関する知識もあるに越したことはありません。
 ありとあらゆる科学ネタが使えます。あとはどの部分を強調するのか、しっかりとした舞台設定、構築が必要となるジャンルではないでしょうか。

 また、未来を舞台に置くことで必要となるものの一つに、社会情勢についての考察があげられます。物語の規模にもよりますが、現代と異なった国際情勢、経済情勢になっていることは想像に難くありません。
 舞台を50年後の日本にした場合、今のまま戦争放棄を続けていられるのか、近隣諸国との関係はどうなっているか、なども問題になってきます。戦争が起きていたり、あるいは無政府状態になっていたりなど、一つ一つ考えを巡らせていくことでよりはっきりした世界観が生まれてきます。
 犯罪や、宗教に対する価値観も、もしかしたら変わっているかもしれません。
 細かな配慮は、読者に対してしっかりとしたイメージを伝えることになり、構想が決して曖昧でないことを示す手段ともなります。ありきたりの設定だったとしても、小道具をうまく使うことによってオリジナリティを出すことは十分可能ではないかと考えます。

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