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SF薀蓄館

破滅系SF

 破滅系、あるいは終末ものと呼ばれるこのジャンルは、さらに二つの種類に分類されます。

1)大きな戦争や疫病、あるいは避けようのない自然災害によって人類が滅んでいくさまを現在進行形で描く。

2)上記の現象によって文明が滅んだあとに再建された世界。

 つまり、【滅んでいく世界】か、【滅んでしまった世界】です。 破滅系の作品は、災害や戦争で都市や社会が破壊される様子を描き、生存者の苦闘や心理に焦点をあてます。  舞台――すなわち崩壊の原因は、現在無数に存在します。世界大戦、バイオハザード、ロボットによる革命、宇宙人の侵略、未知の疫病、大地震や氷河期による自然災害、隕石の飛来――
 数え上げればきりがありませんが、未知の存在による圧倒的破壊、というのが共通点のようです。敵は子供向けに出てくるような悪の結社ではなく【現象】であり、立ち向かうのは非常に困難です。そこで立ち回る人々のドラマもまた、このジャンルの魅力のひとつです。恐怖に駆られて自分だけ生き残ろうという浅ましさ。逆に家族のために意地でも打ち勝とうと戦うもの。破滅に落ちていく世界をゆっくりと眺める傍観主義者……。危機的状況の中で思わぬ本性が垣間見え、人間という存在を改めて認識させられます。
 また、世界を滅ぼすか救うか、どのような過程を描くかで、作者の人となりも分かってきます。作品を好きになったなら、もしかしたらその作者さんとも話が合うかもしれません。
 
 題材の中には聖書の一部を使ったものがよく見られます。世界各地の神話や宗教には世界の終わりを描写したものが多く、題材に使いやすいからでしょう。キリスト教のハルマゲドンや、北欧神話のラグナロク、また旧約聖書のノアの箱舟は腐敗した文明が大洪水で破滅する様子や、新しい文明が破滅後に再建されるという希望を描いていて、映画や小説にもよく用いられています。
 作品のテーマは、【生存への苦闘】が主ですが、ときには【人類への警鐘】であることもあります。お手伝いや、労働用に作ったロボットが反逆を引き起こす。他国への攻撃用に作っていたウイルスが漏れだしてしまう。森林を伐採しすぎたために環境が激変してしまう。人類の好き勝手な振る舞いは、思わぬしっぺ返しを受けることになる。そういう過ちを現実にしないために物語に書きおこしている、といえるのかもしれません。
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※以上、かわい洋ヘイさんから寄稿いただきました。ご協力ありがとうございました!

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